トリミングサロンを選ぶとき、料金や仕上がり、スタッフの雰囲気は気にしても、「照明」まで気にしたことはあるでしょうか。おそらく多くの飼い主様にとって、照明は「明るければいい」くらいのものかもしれません。
けれど、犬の目は人の目とは仕組みが少し違います。人にはただの明るい照明に見えていても、犬にはちらついて見えているかもしれない。そう考えると、トリミングのあいだずっとその光の下で過ごすワンちゃんにとって、照明は意外と大切な環境のひとつです。
この記事では、犬の目と光のちらつきの関係、蛍光灯とLEDで犬の行動を比べた研究、そしてトリミングサロンの環境で確かめておきたいことをご紹介します。
犬の目は「ちらつき」に敏感といわれる
照明の中には、一見ずっとついているように見えて、実はとても速いスピードで点いたり消えたりをくり返しているものがあります。人の目には、ある速さより速い点滅は、つながった光に見えてしまうため、ちらつきには気づきません。
この「点滅を点滅として感じられるかどうか」の境目は、動物によって違います。犬は、人よりも速い点滅を見分けられるといわれています。もともと狩りをしていた動物ですから、動くものをすばやく捉える目を持っているのです。
つまり、人にはただの明るい光に見えていても、犬にはその光がちらついて見えている可能性がある、ということです。
犬の目の、そのほかの特徴
犬の目には、ちらつきへの敏感さのほかにも、人とは違う特徴があるといわれています。
- 薄暗い場所でも見えやすい:目の奥に光を反射するしくみがあり、わずかな光でもものを捉えやすいといわれています。夜に写真を撮ると、ワンちゃんの目が光って写るのはこのためです
- 動くものに気づきやすい:細かい形を見分けるよりも、動きを捉えることが得意だといわれています
- 色の見え方が違う:青や黄色の仲間は見分けやすい一方で、赤と緑の違いはわかりにくいといわれています
- 細かいところは人ほどはっきり見えていない:そのぶん、音やにおいも使ってまわりの様子を確かめています
薄暗い場所でもよく見える目は、裏を返せば、明るすぎる光をまぶしく感じやすい可能性があるということでもあります。照明は、ちらつきだけでなく、明るさや光の当たり方も大切なのです。
蛍光灯のちらつきとは
古いタイプの蛍光灯は、電気の波に合わせて明滅する
家庭やお店に届いている電気は、一定のリズムで向きが入れ替わる「交流」です。所沢を含む東日本では、この入れ替わりが1秒間に50回あります。古いタイプの蛍光灯は、この電気の波に合わせて明るくなったり暗くなったりをくり返すため、1秒間におよそ100回、明るさが変わっています。
人の目には、このちらつきはほとんど気づかれません。けれど、人より点滅に敏感な動物には、感じ取られている可能性があると考えられています。古くなった蛍光灯が、点け始めにチカチカしたり、端のほうがちらついたりするのを見たことがある方もいるのではないでしょうか。
新しいタイプの照明は、ちらつきが少ないものが多い
一方で、「インバーター式」と呼ばれる蛍光灯は、とても速いスピードで点灯するため、ちらつきはずっと少なくなります。LED照明も、多くはちらつきの少ないつくりになっています。ただし、LEDでも製品によってはちらつきがあるものもあるため、「LEDならすべて安心」というわけではありません。
| 照明の種類 | ちらつき | ポイント |
|---|---|---|
| 古いタイプの蛍光灯 | ある(東日本では1秒間におよそ100回) | 人には気づきにくいが、犬には感じ取られている可能性 |
| インバーター式の蛍光灯 | 少ない | とても速いスピードで点灯する |
| LED照明 | 少ないものが多い | 製品によってはちらつくものもある |
蛍光灯とLEDで犬の行動を比べた研究
照明のちらつきが犬にどう影響するのかは、まだ研究が始まったばかりの分野です。その中で、2025年に発表された研究があります。
この研究では、保護施設にいる犬54頭を、蛍光灯の部屋と、ちらつきのないLEDの部屋に分けて、犬たちの様子を観察しました。その結果、蛍光灯の部屋の犬は、ケージの前のほうにいたり、立っていたり、吠えたり、口のまわりをなめたりする様子が多く見られました。反対に、LEDの部屋の犬は、横になっていたり、ベッドの上で過ごしていたりする様子が多かったと報告されています。
研究チームは、蛍光灯の下では活発な行動が、LEDの下では落ち着いた行動が多い傾向がうかがえるとしたうえで、照明のちらつきが犬に与える影響については、さらに調べる必要があるとしています。この結果だけで「蛍光灯が犬の体に悪い」と言い切ることはできませんが、「ちらつきの少ない照明のほうが、犬が落ち着いて過ごせるかもしれない」と考える手がかりにはなります。
また、犬以外の動物でも、鳥の仲間で、古いタイプの蛍光灯より、ちらつきのない照明のほうを好んだという報告もあります。人には見えないちらつきが、動物にとっては気になっているかもしれない。そんな視点を持っておくことは、動物と暮らすうえで意味のあることだといえるでしょう。
トリミングサロンで照明が大切な理由
長い時間、明るい光の下で過ごす
トリミングでは、トリマーが毛の状態や皮膚を細かく確かめながら作業するため、作業台のまわりは明るく照らされています。ワンちゃんは、その明るい光の下で、数時間を過ごすことになります。
ワンちゃんはもともと緊張している
トリミングは、ワンちゃんにとって緊張しやすい時間です。いつもと違う場所で、体を触られ、水や風を当てられる。そんなときに、まわりの光までちらついていたら、落ち着きにくくなるかもしれません。
環境の負担は、できるだけ減らしたい
トリミングそのものの緊張をなくすことはできません。だからこそ、照明や音など、減らせる負担はできるだけ減らしたいものです。照明に気を配っているサロンは、ワンちゃんが過ごす環境全体に目を向けているサロンだといえます。
照明のほかにも気にしたい環境
照明だけでなく、トリミングサロンにはワンちゃんの負担になりやすい環境がほかにもあります。
音
ドライヤーやバリカンの音、ほかのワンちゃんの鳴き声など、サロンにはさまざまな音があります。犬は人よりも耳がよく、音に敏感な子も少なくありません。たくさんのワンちゃんが同じ空間で過ごしていると、それだけで落ち着かない子もいます。
におい
犬は、においでまわりの様子を確かめる動物です。シャンプーの強い香りや、ほかのワンちゃんのにおいがこもっていると、落ち着きにくくなることもあります。
温度と湿度
ドライヤーを使うトリミングルームは、温度や湿度が上がりやすい場所です。暑さに弱い犬にとって、温度と湿度の管理はとても大切です。
床のすべりやすさ
すべりやすい床は、足腰への負担になるだけでなく、踏んばれないことで不安を感じる子もいます。
こうした環境については、「犬の負担が少ないトリミングサロンとは」や「衛生的なトリミングサロンの見分け方」でもご紹介しています。
光のまぶしさや当たり方にも配慮を
真上からの強い光
トリミングでは、細かい作業のために手元を明るくする必要があります。ただ、ワンちゃんが上を見上げたときに、強い光が直接目に入るような配置だと、まぶしさから顔をそむけたくなることもあるかもしれません。顔まわりのカットなど、ワンちゃんが上を向く場面では、光の当たり方にも気を配りたいところです。
明るさの急な変化
暗い場所から急に明るい場所に移ると、人でもまぶしく感じます。待機スペースと施術スペースで明るさが大きく違うと、移動のたびにワンちゃんが戸惑うこともあります。
写真撮影のフラッシュ
仕上がりの写真を撮るときも、フラッシュを使わずに、自然な光で撮る工夫をしているサロンもあります。お家で愛犬の写真を撮るときも、フラッシュを使わずに、窓辺の明るい場所で撮ると、ワンちゃんも驚かずにすみます。
自然の光も上手に
窓から入る自然の光は、ちらつきがなく、ワンちゃんにとってもやさしい光です。ただし、強い日差しは室温が上がる原因にもなるため、カーテンなどで調節しながら上手に取り入れたいところです。
照明や光の環境は、一つひとつは小さなことです。けれど、緊張しやすいトリミングの時間だからこそ、小さな配慮の積み重ねが、ワンちゃんの過ごしやすさにつながります。
飼い主様ができるチェック
サロンの照明や環境は、見学や来店のときに、少し気にしてみるだけでも確かめられます。
照明を見てみる
天井の照明が、細長い蛍光管なのか、LEDなのかを見てみましょう。蛍光管の端が黒ずんでいたり、点け始めにチカチカしていたりする場合は、古いタイプの照明かもしれません。
スマートフォンのカメラで写してみる
ちらつきのある照明をスマートフォンのカメラで写すと、画面に横じまのような模様が出ることがあります。機種や設定によって見え方は違うので、あくまで目安ですが、お家の照明を確かめるときにも使える方法です。
音やにおいを感じてみる
お店に入ったときに、ドライヤーの音や鳴き声がどのくらい聞こえるか、においがこもっていないかも、大切な手がかりになります。
愛犬の様子を見る
いちばんの手がかりは、愛犬の様子です。お店に入ったときに落ち着かない、お迎えのときにいつもよりぐったり疲れている、といった様子が続くようなら、サロンの環境がその子に合っているかを考えてみるのもよいでしょう。
気になることは聞いてみる
「照明はどんなものを使っていますか?」「施術中はほかの子と同じ部屋ですか?」など、気になることは遠慮なく聞いてみましょう。環境に気を配っているサロンなら、ていねいに答えてくれるはずです。
蛍光灯は2027年末までに製造・輸出入が終わる
蛍光灯には、少しだけ水銀が使われています。水銀に関する国際的な取り決めにもとづき、日本では、住宅やお店などで使われている一般照明用の蛍光灯の製造と輸出入が、種類に応じて2027年末までに段階的に終わることになっています。
ただし、すでに使っている蛍光灯を使い続けることや、在庫の蛍光灯を買って使うことは、これからもできます。そのため、しばらくのあいだは、蛍光灯を使い続けるお店や施設もあると考えられます。照明をどうするかは、それぞれのお店の判断によるということです。
お家の照明も見直してみる
照明のちらつきは、サロンだけの話ではありません。ワンちゃんがいちばん長く過ごすのは、お家です。
- ワンちゃんがよく過ごす部屋に、古い蛍光灯が残っていないか
- 点け始めにチカチカする照明はないか
- スマートフォンのカメラで写したときに、縞模様が出ないか
蛍光灯の製造が終わるのに合わせて、照明をLEDに替えるご家庭も多いと思います。そのときに、「ちらつきの少ないもの」を意識して選んでみるのもよいかもしれません。なお、蛍光灯の器具にLEDの管だけを入れ替えるときは、器具との相性によっては工事が必要なこともあるため、電気工事の専門家に相談しましょう。
お家の照明を選ぶときのポイント
お家の照明を新しくするときは、次のようなことも参考にしてみてください。
- 「ちらつきの少ない」表示を確かめる:製品の説明に、ちらつきを抑えていることが書かれているものを選ぶと安心です
- 明るさを調節できるものを:夜は少し明るさを落とすなど、時間帯に合わせて調節できると、ワンちゃんも休みやすくなります
- ワンちゃんの寝場所の真上を避ける:寝場所の真上に強い照明があると、まぶしくて落ち着かないこともあります。ケージやベッドの位置もあわせて見直してみましょう
- 夜はやわらかい色合いの光を:白っぽい強い光より、暖かみのある光のほうが、夜は人もワンちゃんもくつろぎやすいと感じる方が多いようです
サロンに聞いてみたいこと(質問の例)
照明のことをサロンに聞くのは、少し勇気がいるかもしれません。けれど、環境に気を配っているサロンなら、こうした質問も歓迎してくれるはずです。
- 「施術スペースの照明は、LEDですか?」
- 「うちの子はまぶしいのが苦手なのですが、配慮してもらえますか?」
- 「待ち時間は、どんな場所で過ごしますか?」
- 「ドライヤーの音やほかの犬の声は、どのくらい聞こえますか?」
答えそのものだけでなく、質問にていねいに向き合ってくれるかどうかも、そのサロンを知る大切な手がかりになります。
SKIPPYが大切にしている環境
SKIPPYでは、トリミング中のワンちゃんの負担をできるだけ減らせるよう、環境づくりを大切にしています。
- トリマーと2人だけの個室:ほかのワンちゃんの鳴き声や気配を気にせず、落ち着いて過ごせます
- 一頭ずつ向き合う:同時に何頭も流れ作業のように施術するのではなく、目の前の一頭にしっかり向き合います
- 短い時間で:小型犬は最短2時間で仕上がるため、長時間の滞在が苦手な子にも負担を抑えやすくなっています
- ホテルエリアは別に:音が出やすいトリミングルームと、お泊まりのワンちゃんが過ごすホテルエリアを分けています
よくあるご質問
蛍光灯のサロンに通っています。すぐに変えたほうがいいですか?
蛍光灯だからといって、すぐにサロンを変える必要はありません。インバーター式など、ちらつきの少ない蛍光灯もあります。愛犬が落ち着いて過ごせているかどうかをいちばんの目安にして、気になることがあればサロンに相談してみましょう。
ちらつきで犬が体調を崩すことはありますか?
照明のちらつきが犬の体にどう影響するかは、まだ研究が少なく、はっきりしたことはわかっていません。ただ、ちらつきの少ない照明のほうが、犬が落ち着いて過ごせる可能性を示した研究はあります。愛犬の体調で気になることがある場合は、かかりつけの動物病院に相談してください。
LEDならどんなものでも大丈夫ですか?
LED照明の多くはちらつきの少ないつくりですが、製品によってはちらつくものもあります。照明を選ぶときは、「ちらつきの少ない」ことをうたった製品を選ぶと安心です。
猫ちゃんも光のちらつきに敏感ですか?
猫ちゃんも、動くものをすばやく捉える目を持っている動物です。犬と同じように、過ごす環境の光に気を配ってあげるとよいでしょう。
スタッフ
まとめ
犬の目は、人よりも光のちらつきに敏感だといわれています。古いタイプの蛍光灯は、人には気づきにくい速さで明滅していて、犬にはそのちらつきが感じ取られている可能性があります。蛍光灯とちらつきのないLEDで犬の行動を比べた研究では、LEDの下のほうが落ち着いて過ごす様子が多かったと報告されています。トリミングサロンを選ぶときは、照明や音、におい、温度など、ワンちゃんが過ごす環境にも少し目を向けてみてください。
参考
- 環境省「一般照明用の蛍光ランプの規制」
- Abrams, J. ほか(2025)Behavioral differences of shelter dogs under fluorescent versus LED lighting. Applied Animal Behaviour Science 289, 106692
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- 住所:埼玉県所沢市北秋津357-1(駐車場あり)
- 電話受付:10時〜19時(年中無休)TEL 050-1794-3246
- ご予約:LINEから24時間受付
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